先月、社内で部署移動がありました。
それに伴って私がいる部署に女性が一人加わりました。
年齢は母親よりも上。もう年金がもらえる年齢だとのことですが、全然そうは見えません。パソコンもスマホもバリバリ使いこなしてます。生き生き働いている人は若く見えるんだなぁ。
この女性のことは以下"おばちゃん"と表記させて頂きます。
ある日、上司達が出払って事務所内が女性だけになりました。
おばちゃんと先輩と私の三人。
男性がいなくなると緊張感が解けてすぐに雑談ムードに。
おばちゃん「naruさんは結婚してるの?」
naru「してます」
おばちゃん「そうなんだ~!何歳?」
naru「31です」
年齢、結婚歴とセットで訊かれる質問がもう一つありますね。
「子どもは?」
ほらきたー!!!
「いないです」
「欲しい…?よね」
「欲しいんですけどなかなかできないんですよね~」
この時点で私、完全に防御態勢に入っていました。
余計なことを言われるんじゃないかって。
何を言われても笑ってサラッと流してやろうって。
すると…
「まぁだ大丈夫よ~!31だもん!滝川クリステルだって妊娠できたんだから~(笑)」
そう言っておばちゃんは豪快に笑いました。
なんだろう……ホッとした自分がいました。
「31なんだからまだ大丈夫」という言葉を受け入れられない時もあるけれど、この時は平気だった。全然嫌味が感じられなくて、カラッとした声音に私のジメッとした疑心感は見事に一蹴されたのでした。
実はこのおばちゃんのお子さん(と言っても私より年上)二人は結婚しておらず、孫もいないそう。「ごめんお母さん!孫は諦めて~!(笑)」と言われているんだとか。結婚や子供を考えるより、今自分が楽しむことを優先している。
東京で二人共とても楽しそうだと語るおばちゃんは、「本当は結婚してほしいんだけどね」なんて言葉は一切口にしなかった。
離れて暮らしていても子供達が今幸せに生活していることを知っているからだと思う。
もしこのおばちゃんに孫がいたらどうだっただろう。
「子どもはいいわよ~」なんて言われただろうか。「歳を取るとできにくくなるよ」なんて余計なお世話なことを言われただろうか。
この年代の人達にとっては結婚して子どもがいるのは当たり前。
当然の人生を歩んできたおばちゃんが、我が子を通して結婚していなくても子どもがいなくても幸せになれることを知っているから、既婚子無しの私の現状を「大丈夫よ~!」と笑い飛ばせたのかもしれません。
私は自分が不妊であることを知ってから、元々のネガティブ思考に拍車がかかり、どんどん自分の人生に否定的になっていきました。
夫と不仲なわけでもなく寧ろ幸せなはずなのに、時には「不幸なのでは」という気分に陥る自分が許せなくなることもある。
子ども作らないの?
育児は大変だけど成長を見守るのは楽しいよ
もっと気楽に取り組んでみたら?
そのうちできるよ
特に子持ちの人からは何を言われても傷付いてしまう。腹を立ててしまう。
「そのうちできるよ」と前記したおばちゃんの言葉はどう違うんだって話ですが、活字では表現できないようなニュアンスの違いがありました。
冷静になって考えてみると、自分自身が否定的になっているこの人生を他人から認めてもらいたいのだと思います。
"子どもが欲しいのに授かれない"…この気持ちは経験したことがない人にはわかり得るはずもありません。
「治療大変だね」「無理しないでね」と下手に気を遣われるより、一切話題に触れないでいてくれた方が思いやりを感じる。痛々しくて可哀想…そんな感情が読み取れた時はとても凹む。
今度お茶しよう
そのネイル可愛いね
旦那さんと仲良さそうで羨ましいな~
そんなことでいいんです。 お世辞だとわかるような言葉でもいい。
今のままでも十分幸せで素敵な人生なんだということを他人に教えてもらいたい。
甘い考えだってわかっているけど、でも、本音です。
自分がなかなか受け入れられないこの人生を、人から認めてもらって安心したいんです。
そうすれば、いつか子どもを諦めることになったとしても、前を向いて歩いていけるかもしれない。
人生の形は十人十色。
人は大人になったら結婚して子供を授かるのが当たり前という時代はもう終わった。
私は結婚しているけれど、未婚の人に「どうして結婚しないの?」「早く相手見つけなよ」なんて思いませんし、勿論言いません。
その人にとって結婚は無価値なのかもしれない。
恋愛対象が異性ではないのかもしれない。
本当は心底悩んでいるのかもしれない。
語られない本音を知る術はないけれど、「今のあなたと過ごしていて私はとても楽しい」というこちらの気持ちが伝わるようにはしていきたいです。
正直、結婚した時は人生の勝ち組だと思ったし、子どもはすぐできるだろうからって安心していた。
そんな驕りはへし折られた。
当たり前って何だろう。
小学校の道徳の授業のテーマになりそうなことを頭の中で反芻する。
ありのままの自分を認めてほしいという思いが強くなった。
人の生き方を尊重しようと思った。
それは、不妊という自分が抱えた大きな問題が教えてくれたことだ。
そして少しずつだけど、子持ちの人の苦労も理解しようという気持ちが芽生えてきた。羨ましいという感情と一緒に「家に子どもと篭りっきりなら気が滅入るだろうな…」と思えたり。だから会いに行こうというい気持ちにはまだなれないけれど;
数分後には真逆の感情が生まれている可能性もあるけど、僅かな自分の成長ぐらいは認めてやらなければ。
最後に、職場での会話の続き。
おばちゃん「Aさん(先輩)は結婚してたっけ?」
先輩「してないです。私はしたくない派です~(笑)」
おばちゃん「あっはっは!ま~今は珍しくないからねえ!!」
そしてまたおばちゃんは明るく笑ったのでした。
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