私達夫婦が人工授精をしたことを知る人はとても少ないです。
私の両親、義母、そして私の職場の先輩のみ。
この人達には普段から治療の経過を話していました。
もちろん治療の内容なんて言う必要はないし、大事なのは結果。
それでも自己タイミングの頃から積み重ねてきた苦悩や痛みを抱え続けるのもつらくて、赤ちゃんができたとわかった後にAIHのことも報告しました。
不妊治療経験者からするとタイミング法とAIHってそんなに大差はなくて、体外受精からが本格的な治療という印象を持っている人が多いと思います。
その認識は間違っていないと思いますし、実際にAIHをしてみて「これっぽっちの処置に保険が利かないのか」と驚いたくらいでした。
しかしその"これっぽっちの処置"を経験した人が身近におらず、費用も自費。名前に"人工"と付いているが故になんとなく敬遠する人もいる。そう思うと、たかが人工授精でもカミングアウトするのには少し勇気が要りました。
それでも話そうと思ったのは、先に挙げた人達は「え、そこまでしたの?」と責めるようなことはしないと信じていたからです。
さて、実際に話してみて半分の人はこう言いました。
「もっと早く人工授精すればよかったねえ」
AIH一回目で妊娠に至ったことから出た言葉だったのだと思います。
しかし、簡単に妊娠できたんだねと言われているようで私としては少々不愉快でして、一回の妊娠率が10%前後であることは必ず付け足しました。運が良かったのだと。私達自身もかなり驚いていると。
人に言われたように、自分も「もっと早くすればよかった」と思っているのかというと…否。そのような考えは一切湧きませんでした。
確かに、もっと早い時期にステップアップをしていたら平成の間に出産していた可能性もある。
だけどそれは今お腹にいる子とは別の人間なのです。
2019年9月周期に排卵した卵子と、数千万~数億分の一の確率でゴールに到達した夫の精子が出会ったことで、今お腹にいる命になったわけです。
その仕組みを知識として持ってはいても、肝心な時に忘れがち。
「もっと早く…」と言った人達も、軽い気持ちで言ったんだと思います。
現代では30代の初産は珍しくも何ともないし、恥ずかしいことでもない。
今後、子育ての中で体力的にしんどさを感じることもあると思います。
そこでふと、「もっと早く産んでいれば…」と思うこともあるかもしれません。
だけど"この子"が誕生したことがいかに奇跡なのかを絶対に忘れてはいけません。
激しいイヤイヤ期に頭を悩ませようが、思春期の反抗期に気が狂いそうになろうが、一度深呼吸をして思い出さなければ。
まずは無事に出産することが大前提だけど、子育ての大変さはきっと想像以上。
私だって人間なので冷静を保つ余裕すらない時もあるでしょう。
だけどここに至るまでの奇跡は頭の隅にとどめておきたいです。
不妊でよかったなんて一度も思ったことはない。
だけど簡単に授かれなかった経験は、世の中が"普通"と思っていることがそうではないということを教えてくれました。
絶対に無駄にはしないぞ!
いつか子どもにも話してあげようと思います。
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